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審判請求書の補正 特許法131条、131条の2

こんにちは

審判請求書を提出(特許法131条)したら、原則は要旨の変更はできないとされています。

しかし、例外的に変更ができるものがあります。(特許法131条の2)

無効審判のときと、それ以外の審判のときで扱いが違います。

 

条文を見ていきましょう。

(審判請求の方式)
第百三十一条

審判を請求する者は、次に掲げる事項を記載した請求書を特許庁長官に提出しなければならない。
一当事者及び代理人の氏名又は名称及び住所又は居所
二審判事件の表示
三請求の趣旨及びその理由
2特許無効審判を請求する場合における前項第三号に掲げる請求の理由は、特許を無効にする根拠となる事実を具体的に特定し、かつ、立証を要する事実ごとに証拠との関係を記載したものでなければならない。
3訂正審判を請求する場合における第一項第三号に掲げる請求の趣旨及びその理由は、経済産業省令で定めるところにより記載したものでなければならない。
4訂正審判を請求するときは、請求書に訂正した明細書、特許請求の範囲又は図面を添付しなければならない。

--------------- 特許法 第百三十一条 引用ここまで ------------


(審判請求書の補正)
第百三十一条の二

前条第一項の規定により提出した請求書の補正は、その要旨を変更するものであつてはならない。ただし、当該補正が次の各号のいずれかに該当するときは、この限りでない。
特許無効審判以外の審判を請求する場合における前条第一項第三号に掲げる請求の理由についてされるとき。
二次項の規定による審判長の許可があつたものであるとき。
三第百三十三条第一項(第百二十条の五第九項及び第百三十四条の二第九項において準用する場合を含む。)の規定により、当該請求書について補正をすべきことを命じられた場合において、当該命じられた事項についてされるとき。

2審判長は、特許無効審判を請求する場合における前条第一項第三号に掲げる請求の理由の補正がその要旨を変更するものである場合において、当該補正が審理を不当に遅延させるおそれがないことが明らかなものであり、かつ、次の各号のいずれかに該当する事由があると認めるときは、決定をもつて、当該補正を許可することができる。
一当該特許無効審判において第百三十四条の二第一項の訂正の請求があり、その訂正の請求により請求の理由を補正する必要が生じたこと。
二前号に掲げるもののほか当該補正に係る請求の理由を審判請求時の請求書に記載しなかつたことにつき合理的な理由があり、被請求人が当該補正に同意したこと。

3前項の補正の許可は、その補正に係る手続補正書が第百三十四条第一項の規定による請求書の副本の送達の前に提出されたときは、これをすることができない。

4第二項の決定又はその不作為に対しては、不服を申し立てることができない。

--------------- 特許法 第百三十一条の二 引用ここまで ------------

 

無効審判以外では請求の理由は変更できますが、無効審判では請求の理由を変更できるのは特別な場合に限られます。

これは無効審判で後で無効理由をどんどん追加されると、審理が進まなくなってしまうので原則は後出しはダメということです。ただし、特許権者が防衛のために訂正を行った場合は、それにともない審判請求人は無効理由や証拠の変更、追加ができます。

一方まったく認められないというのは状況によってはかえって審判に時間がかかったり、不満で審決取消訴訟になったりしますので、審判官の裁量で認めることも可能となっています。ただし審判請求人の訂正がない場合は審判請求人が認めないといけません。

結局のところ原則にこだわりすぎる不十分な審理で後で蒸し返すより、審判は双方が納得して早く決着するほうがいいということなのでしょう。

 

131条の2第4項の不服が申し立てられないのは、そもそも審判請求書の補正を認めるかは審判長の裁量の範囲だからです。

一般的な話ですが審判の結果に不満なら審決取消訴訟ができます。仮に審判請求人が審判請求書の補正ができずその後の審決に不満の場合は、知財高裁へ審決取消訴訟を訴えることもできます。