Studying Intellectual Property Law

みなさまの知財学習のお手伝い

特許を受ける権利 冒認出願

特許を受ける権利に関連する項目として、冒認出願があります。冒認出願というのは特許の場合は発明者でない人が勝手に出願して特許権を取得するケースです。

関連するものとして共同出願違反というのもあります。こちらは本来共同で出願すべきものを単独で出願してしまった場合です。

 

1)自分のアイデアを勝手に出願されたら

他人に特許が出願されているのを見つけたら、(発明者から)特許を受ける権利を譲り受けた者は、特許を受ける権利を譲る受けることができます。特許法33条 

さらに特許権が設定登録されているようでしたら、特許権の移転を請求できます。特許法74条 特許権の移転の特例

この特許権の移転の特例は平成23年の導入ですから比較的新しい制度ですね。

ただ、これを実際にするには冒認を主張するだけではだめで、客観的に自己の発明であることを立証しないといけませんので、日ごろから研究開発の記録を取るなど必要です。

 

2)他人から冒認だと言われたら

完全に他人の発明を先にパクるケースはあまりないとは思いますが(そもそもその秘密をどう入手したのかのほうが犯罪になりそうです)、よくありそうなのは冒認というよりは共同出願違反でしょうか。共同開発などが終了して単独出願したらそれはうちのアイデアが含んでいるといわれることはありそうです。

これは予防が第一で契約段階で共同開発した場合の知財の扱いを明確化しておくべきですか。また転職者が前の会社の内容を含んでいた場合もリスクですね。転職前の会社の発明は職務発明にはなりませんが、営業秘密を持ち出したとして訴えられるリスクもあります。

万一訴訟になってしまった場合は、反論のために、自己の発明であることを立証することになるので、これも日ごろから研究開発の記録を取るなど必要です。

 

3)拒絶理由

冒認出願は拒絶理由になります。49条7号

しかし、審査官は冒認かはわからないので当事者が出願に気が付いて何か特許庁に情報提供しないと拒絶にはなりにくいでしょうね。

 

4)異議申し立て、無効理由

冒認を理由に異議申し立てはできせんが、無効審判はできます。特許法123条1項6号

ただし、冒認(共同出願違反も)で無効審判を請求できるのは、本来特許を受ける権利を持つものに限ります。特許法123条2項

異議申し立て理由でないのは、冒認のような権利帰属に関する争いは当事者間の問題なので、審査に対しての異議申し立てにはなじまないということでしょう。

 

123条は無効理由を勉強する上で大変重要な条文ですので以下に一部引用します。

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(特許無効審判)
第百二十三条特許が次の各号のいずれかに該当するときは、その特許を無効にすることについて特許無効審判を請求することができる。この場合において、二以上の請求項に係るものについては、請求項ごとに請求することができる。

 

(略)

1項二号 その特許が第二十五条、第二十九条、第二十九条の二、第三十二条、第三十八条又は第三十九条第一項から第四項までの規定に違反してされたとき(その特許が第三十八条の規定に違反してされた場合にあつては、第七十四条第一項の規定による請求に基づき、その特許に係る特許権の移転の登録があつたときを除く。)。

(略)

1項六号 その特許がその発明について特許を受ける権利を有しない者の特許出願に対してされたとき(第七十四条第一項の規定による請求に基づき、その特許に係る特許権の移転の登録があつたときを除く。)。

(略)

2項 特許無効審判は、利害関係人(前項第二号(特許が第三十八条の規定に違反してされたときに限る。)又は同項第六号に該当することを理由として特許無効審判を請求する場合にあつては、特許を受ける権利を有する者)に限り請求することができる。

(略)

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