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PCT規則 受理官庁による優先権の回復 26の2.3

こんにちは

今回は受理官庁による優先権の回復の条文を見てみます。

回復とは期限を過ぎても一定の条件を満たすときには請求を認める制度ですが、条件があります。

特に学習上押さえておくべき点として回復が認められる優先期間の満了からの期間(期限と、押さえておくとキーワードとしては、相当な注意を払った場合と 故意ではない場合の2つのキーワードがあります。

これはPLT条約で使われている用語で受理官庁の国によりどちらを採用しているか(もしくは両方か)は異なります。PLT条約の内容については今は触れませんのでリンクだけ紹介しておきます。そのうち扱いたいと思います。

特許法条約(PLT)の概要 | 経済産業省 特許庁

 

いきなり条文を見てもわかりにくいと思いますので、まずは以下の特許庁のリンクをご一読いただければいいかと思います。

令和5年4月1日以降に優先期間を徒過した国際出願の優先権の回復(「故意ではない」基準)について | 経済産業省 特許庁

 

それでは条文を見てみましょう。条文の並びとしては、(a)から(j)までありその中に数字で(i)などがあります。

 

PCT規則

26の2.3 受理官庁による優先権の回復


(a) 国際出願の国際出願日が、当該優先期間の満了の日の後であるが、当該満了の日から二箇月の期間内である場合には、受理官庁は、出願人の請求により、かつ、(b)から(g)までの規定に従うことを条件として、当該受理官庁が採用する基準(「回復のための基準」)が満たされていること、すなわち、当該優先期間内に国際出願が提出されなかつたことが、次のいずれかの場合によると認めた場合には、優先権を回復する。
(ⅰ) 状況により必要とされる相当な注意を払つたにもかかわらず生じた場合
(ⅱ) 故意ではない場合
各受理官庁は、これらの基準のうち少なくとも一を適用するものとし、また、これらの両方を適用することができる。


(b) (a)の規定に基づく請求は、次のとおりとする。
(ⅰ) (e)に規定する期間内に当該受理官庁に提出すること。
(ⅱ) 当該優先期間内に国際出願を提出されなかつたことの理由を記載すること。
(ⅲ) 望ましくは(f)の規定に基づき要求される申立てその他の証拠が添付されているものとすること。

(c) 先の国際出願についての優先権の主張が当該国際出願に記載されていない場合には、当該出願人は、(e)に規定する期間内に、26の2.1(a)の規定に基づく優先権の主張を追加する書面を提出する。

(d) (a)に規定する請求の提出は、(e)に規定する期間内に回復請求手数料の受理官庁への支払を条件とすることができる。当該手数料の額は、受理官庁が定める。当該手数料の支払期間は、受理官庁の選択により、(e)に規定する当該期間の満了の後最長二箇月の期間延長することができる。

(e) (b)(ⅰ)、(c)及び(d)に規定する期間は優先期間の満了の日から二箇月とする。ただし、出願人が、第二十一条(2)(b)の規定に基づき早期の国際公開を請求する場合において、国際公開の技術的な準備が完了した後に(a)の規定に基づく請求若しくは(c)に規定する書面で提出されたもの又は(d)に規定する手数料で支払われたものは、当該期間内に提出されなかった又は支払われなかつたものとみなす。

(f) 受理官庁は、事情に応じて相当の期間内に(b)(ⅱ)に規定する理由の陳述を裏付ける申立てその他の証拠を提出することを要求することができる。

(g) 受理官庁は、(a)の規定に基づく請求の全部又は一部に関し、拒否しようとすることについて事情に応じて相当の期間内に意見を述べる機会を出願人に与えることなく、これを拒否しない。受理官庁による拒否しようとする書面は、(f)の規定に基づく申立てその他の証拠を提出する求めとともに出願人に送付できる。


(h) 受理官庁は、速やかに次のことを行う。

(ⅰ) 国際事務局に(a)の規定に基づく請求の受理を通知すること。

 (ⅱ) 当該請求に基づく決定すること。
 (ⅲ) 出願人及び国際事務局に当該決定及び当該決定が基づいた回復のための基準を通知すること。
(ⅳ) (hの2)の規定に従うことを条件として、出願人から受領した(a)の規定に基づく請求に関する全ての書類(請求自体の写し、(b)(ⅱ)に規定する理由の陳述及び(f)に規定する申立てその他の証拠を含む。)を国際事務局に送付すること。
(hの2) 受理官庁は、次のことを認めるときは、出願人による理由を示した請求により、又は受理官庁の決定に基づき、(a)の規定に基づく請求に関して受領した書類又はその一部を送付してはならない。
(ⅰ) 当該書類又はその一部が国際出願について公衆に周知する目的に明らかに資さないこと。
 (ⅱ) 当該書類又はその一部の公開又は公衆による利用により、いずれかの者の個人的な又は経済的な利益が明らかに損なわれること。

(ⅲ) 当該書類又はその一部を利用する優先的な公共の利益がないこと。
受理官庁は、書類又はその一部を国際事務局に送付しないことを決定する場合には、国際事務局にその旨を通知する。

 

注意 以下の(i)は数字の1ではなく英語のアイ
(i) 各受理官庁は、国際事務局に当該受理官庁が採用する回復のための基準及びこれに関する後の変更を通知するものとする。国際事務局は、当該情報を速やかに公報に掲載する。

(j) 二千五年十月五日において(a)から(i)までの規定が受理官庁によつて適用される国内法令に適合しない場合には、当該受理官庁がその旨を二千六年四月五日までに国際事務局に通告することを条件として、これらの規定は、その国内法令に適合しない間、当該受理官庁については、適用しない。国際事務局は、その通告を速やかに公報に掲載する。

--------------- 引用ここまで ------------

長くなりましたので

第四十九規則の三 受理官庁による優先権の回復の効果、指定官庁による優先権の回復については次回にします。