Studying Intellectual Property Law

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PCT規則 優先権の主張の欠陥 26規則の2.2

こんにちは

PCTでの優先権についての続きです。

これまで説明したとおり、PCT条約には優先権の主張についてあまり具体的な手続きは書かれておらず、PCT規則にゆだねられています。

 

本題の前に、ややこしいのですが、PCT規則の条文番号の数え方として、「の」の入る位置が大事で

26.22 第十四条(1)(a)(ⅰ)及び(ⅱ)に規定する要件の点検

262.2 優先権の主張の欠陥

は別ものです。

 

では26の2.2条文を見ていきましょう。

PCT規則「26の2.1 優先権の主張の補充又は追加」では出願人からの自発的な優先権の主張の補充又は追加ですが、この26の2.2 では受理官庁または国際事務局からの不備の指摘のケースとなりまいす。

読むときには、主語に注意してください。受理官庁なのか、国際事務局なのかに気にしましょう。

 

PCT26規則の2.2 優先権の主張の欠陥


(a) 受理官庁又は、受理官庁が怠つたときは、国際事務局は、優先権主張に関して次のいずれかのことを認める場合には、出願人に対し優先権の主張の補充をするよう求める。
(ⅰ) 当該国際出願の国際出願日が、当該優先期間の満了の日の後であり、かつ、26の2.3の規定に基づく優先権の回復の請求が提出されていないこと。
(ⅱ) 当該優先権の主張が4.10に定める要件を満たしていないこと。
(ⅲ) 当該優先権の主張における表示がこれに対応する優先権書類に記載されている表示と合致しないこと。 

(ⅰ)に規定する場合において、国際出願日が当該優先期間の満了の日から二箇月以内であるときは、当該受理官庁又は国際事務局は、26の2.3の規定に従つて優先権の回復のための請求の提出の可能性を出願人に通知する。ただし、受理官庁が国際事務局に対して、26の2.3(a)から(i)までの規程が当該受理官庁によつて適用される国内法令と適合しないことを、26の2.3(j)の規定に基づき通知した場合は、この限りでない。


(b) 出願人が、26の2.1(a)に規定する期間の満了前に、優先権の主張の補充をする書面を提出しない場合には、当該優先権の主張は、(c)の規定に従うことを条件として、条約の手続上行われなかつたものとみなし(「無効とみなす」)、受理官庁又は国際事務局は、その旨を宣言し、及び出願人に通知する。受理官庁又は国際事務局がその旨を宣言する前であり、かつ、当該期間の満了の後一箇月以内に受理した優先権の主張の補充をするいかなる書面も、当該期間の満了の前に受理したものとする。


(c) 優先権の主張は、次のいずれかの理由のみでは無効とはみなさない。
(ⅰ) 4.10(a)(ⅱ)に規定する先の出願の番号の表示が欠落していること。
(ⅱ) 優先権の主張における表示がこれに対応する優先権書類に記載されている表示と合致しないこと。
(ⅲ) 当該国際出願の国際出願日が、当該優先期間が満了した日よりも遅い日であること。ただし、国際出願日は当該満了の日から二箇月の期間内とする。


(d) 受理官庁若しくは国際事務局が(b)の規定に基づく宣言を行つた場合、又は(c)が適用されるという理由のみで優先権の主張が無効とみなされなかつた場合には、国際事務局は、実施細則に定めるところにより、優先権の主張に関する情報及び国際公開の技術的な準備が完了する前に国際事務局が受理した出願人の提出した当該優先権の主張に関する情報を国際出願とともに公表する。

国際出願の国際公開が第六十四条(3)の規定により行われない場合には、当該情報は、第二十条の送達に含める。


(e) 出願人は、優先権の主張の補充又は追加を希望するが26の2.1に規定する期間が満了している場合には、優先日から三十箇月を経過する前に、実施細則でその額を定める特別の手数料の支払を条件として、当該事項に関する情報を公表することを請求することができ、国際事務局は、速やかにその情報を公表する。

引用元 PCTリーガルテキスト:条約、規則及び実施細則

 

優先権の回復期間内であれば、仮に優先権主張に不備があったとしても、優先権の回復のための請求の提出の可能性を出願人に通知することになっています。

実は次の章の「26の2.3 受理官庁による優先権の回復」に回復の話が出てくるのでまだ説明していませんが、とりあえず優先期間が満了しても、回復の仕組みがあると理解していただければと思います。

出願人が適切な対応をしなかったとしても、優先権の主張は無効になりますが、出願自体が無効になるわけではありません。(優先日が後になると先行文献が変わるので拒絶、無効になるかもしれませんが)