Studying Intellectual Property Law

みなさまの知財学習のお手伝い

国内優先権と先の出願のみなし取下げ

こんにちは

 

しばらく国内優先権について考えてみたいと思います。

先の出願のみなし取下げ(取下擬制)は初めてのときはなぜ”みなし”なのか分かりにくいかと思います。

ここでの「みなし取下げ」とは簡単にいうと出願人が自分で取下げの手続きをしなくても(自動的に)取下げをしたと同様の扱いになるということです。

 

国内優先(41条)では日本に基礎出願(先の出願)と国内優先権での出願(後の出願)2つの出願が並列してあるわけです。後の出願があるのだから先の出願は不要ということで取り下げるのですが、いくつか論点が点があります。

 

みなし取下げの条文(42条)を見てみましょう。

(先の出願の取下げ等)
第四十二条

前条第一項の規定による優先権の主張の基礎とされた先の出願は、その出願の日から経済産業省令で定める期間を経過した時に取り下げたものとみなす。ただし、当該先の出願が放棄され、取り下げられ、若しくは却下されている場合、当該先の出願について査定若しくは審決が確定している場合、当該先の出願について実用新案法第十四条第二項に規定する設定の登録がされている場合又は当該先の出願に基づく全ての優先権の主張が取り下げられている場合には、この限りでない。
2前条第一項の規定による優先権の主張を伴う特許出願の出願人は、先の出願の日から経済産業省令で定める期間を経過した後は、その主張を取り下げることができない。
3前条第一項の規定による優先権の主張を伴う特許出願が先の出願の日から経済産業省令で定める期間内に取り下げられたときは、同時に当該優先権の主張が取り下げられたものとみなす。

e-Gov 法令検索

 

条文から時期の問題と、取下げられない例外について要件をチェックしてみましょう。

 

1)いつ取り下げとみなすのか?

42条1項には先の出願の日から経済産業省令で定める期間を経過した時

とあります。具体的に省令で定められている期間は1年4月です。

優先期間は出願の日から1年なのにこの期間は1年4月なの?と疑問に思うかもしれません。

たしかに国内優先権は1年以内に出願をしないといけないのですが、その国内優先権主張を取下げ(この取下げは先の出願「基礎出願」の取下げではありません、優先権主張の取下げです。この2つは混乱しやすいのでご注意ください)ができる期間が1年後からさらに4月あります。つまり、先の出願から1年4月後に、出願人が国内優先権主張をすることがが確定しますので、そのタイミングをもって基礎出願(先の出願)の取下げとみなされるわけです。

わざわざ国内優先権で出願したのにその主張を自分から取り下げるケースはあるの?優先権出願した時点で取り下げればいいのに、と思うかもしれませんが、先の出願と後の出願が内容的に独立していて別の出願としてそれぞれ扱った方が望ましいことが後で判明することもあります。

 

2)先の出願を取り下げることができる状態なのか?

取り下げるにも、要件的に取り下げようがない場合があります。

 

42条1項ただし書きにできないケースが列挙されていますので見てみましょう。

  • 当該先の出願が放棄され、取り下げられ、若しくは却下されている場合
  • 当該先の出願について査定若しくは審決が確定している場合、
  • 当該先の出願について実用新案法第十四条第二項に規定する設定の登録がされている場合
  • 当該先の出願に基づく全ての優先権の主張が取り下げられている場合

とあります。

(前の記事の41条では国内優先権で出願できないケースを話しましたが、この記事の42条1項ただし書きでは取下げできないケースです。条文の表現が似ているので混乱しやすいですが。)

 

42条1項ただし書きには列挙されていないのですが、取り下げることができないケースに経済安全保障推進法の保全指定というのがあります。これは次回に説明したいと思います。