Studying Intellectual Property Law

知的財産法条文教室 みなさまの知財学習のお手伝い

意匠法の法目的 意匠法1条

こんにちは

最初ですので、1条を読んでおきましょう。ついでに他の法律とに比較します。

 

(目的)
意匠法 第一条

この法律は、意匠の保護及び利用を図ることにより、意匠の創作を奨励し、もつて産業の発達に寄与することを目的とする。

--------------- 意匠法 引用ここまで ------------

これだけではそっけないので、青本を見てみます。

工業所有権法(産業財産権法)逐条解説〔第22版〕 | 経済産業省 特許庁

 

意匠の創作は、特許法における発明、実用新案法における考案と同じく、抽象的なものである。しかし、発明や考案が自然法則を利用した技術的思想の創作であり、特許法及び実用新案法はその側面からの保護を目的としているのに対し、意匠法は二条一項の表現からも明らかなように美感の面からアイデアを把握し、これを保護しようとするものである。すなわち、特許法及び実用新案法と意匠法とでは保護の方法が異なるのである。
本条に規定されているように、この法律の目的は意匠の保護及び利用を図って意匠の創作を奨励し、産業の発達に寄与することである。意匠と産業の発達の関係については幾つかの態様が考えられる。まず、優れた意匠を商品に応用することによって需要が増加し、産業の興隆が実現される場合がある。また、優れた意匠が同時に技術的に優れている場合もあり、技術の進歩ひいては産業の発達が意匠そのものによって直接に実現される場合がある。

--------------- 青本 引用ここまで ------------

 

他の法律の法目的です。比較してみると意匠の特徴がわかるかと思います。

特許や実用新案も産業の発達が目的ですね。

 

特許法 第一条

この法律は、発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もつて産業の発達に寄与することを目的とする。


実用新案法 第一条

この法律は、物品の形状、構造又は組合せに係る考案の保護及び利用を図ることにより、その考案を奨励し、もつて産業の発達に寄与することを目的とする。


商標法 第一条

この法律は、商標を保護することにより、商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り、もつて産業の発達に寄与し、あわせて需要者の利益を保護することを目的とする。

 

不正競争防止法 第一条

この法律は、事業者間の公正な競争及びこれに関する国際約束の的確な実施を確保するため、不正競争の防止及び不正競争に係る損害賠償に関する措置等を講じ、もって国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。

 

著作権法 第一条

この法律は、著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする。

 

意匠法の青本にはそれぞれの権利の抵触について触れられています。

意匠権と商標権・著作権

意匠権は商標権又は著作権と抵触する場合がある(二六条)。すなわち、同一のアイデア意匠権、商標権、著作権それぞれの対象になり得るのである。

これらの権利について簡単に説明すれば、意匠権と商標権とは産業財産権であるという点で共通するが、保護の対象が異なる。意匠権が美的な創作を保護するものであるのに対し、商標権の保護対象は商標を使用する者の業務上の信用である。業務上の信用と無関係なものは意匠であり得ても商標ではなく、視覚を通じて美感を起こさせることができないものは商標ではあり得てもそれについて意匠登録を受けることができない。

また、意匠権著作権との相違は、前者が産業政策的観点から認められる権利であって、国家の行政処分によって発生するのに対し、後者は著作者の精神的表現に関してその人格的・財産的利益を保護することを目的とする権利であり、著作物の成立と同時に発生する点である。

--------------- 青本 引用ここまで ------------

 

各法を見比べてみると実用新案というのは特許と意匠の間のような感じでしょうか。

意匠は物品の形状の美観の観点で保護するものですが、実用新案(特許でも保護は可能ですが)では物品の形状の機能の観点で保護するものです。

特許(または実用新案)と意匠では目的が違うので、同じ物品でもそれぞれの観点で保護が必要なら、特許と意匠は同じ物品に対して両方出願できますね。(公報発行後は新規性の問題にはなりますが)

 

特許権と他人の意匠権がお互いに抵触する場合はどうなるか。

これは過去にやりました。

ipstudy.hatenablog.com

 

青本特許法72条を一部、引用します。

意匠については、単に利用する場合のみならず、権利が相互に抵触する場合もある。特許権特許権又は特許権実用新案権については相互に抵触する場合は拒絶されることになっており、過誤により特許又は登録がされた場合も無効にされるわけであるが、特許権意匠権とは質的に異なるものを権利の客体としているので抵触するような内容のものについても一応それぞれの権利を付与し、その実施に当たっては後に出願した者について単に制約を加えることとしたのである。

例えば自動車のタイヤに特殊な凹凸を付することがタイヤの磨耗を少なくするということで特許権の対象となり得る場合において、同じ凹凸を付することが視覚に訴え美感を起こさせるときは意匠権の対象ともなり得るのである。また、特許権と商標権についても抵触する関係があり得る。例えば物品の形状自体に関する発明が特許権の対象となり得る場合において、その物品(商品)自体の形状を表示する立体商標が商標権の対象ともなり得るのである。これらの場合において権利者が異なるときは、後願者は先願者の許諾を得なければ実施することができないというわけである。
本条(注特許法72条のこと)のような規定が置かれている結果、他人が実施について許諾をしない限りは、その特許発明は実施することができないことになるが、それでは、せっかくの発明も実施できないまま埋もれてしまい、技術の進歩にとって好ましいことではないので、特許庁長官に通常実施権の設定の裁定を請求することができる場合があることとしている(九二条)。

--------------- 青本 引用ここまで ------------