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みなさまの知財学習のお手伝い

PCT規則 指定官庁による優先権の回復 49の3.2

こんにちは

前回、優先権の回復の49の3.1を説明しましたが、今回はPCT規則49の3.2 指定官庁による優先権の回復を扱います。

 

ご参考までにPCT規則の関連する条文番号の構造はこのようになっています。

26の2.3 受理官庁による優先権の回復

第四十九規則の三 受理官庁による優先権の回復の効果、指定官庁による優先権の回復
49の3.1 受理官庁による優先権の回復の効果
49の3.2 指定官庁による優先権の回復 

 

それでは条文を見てみましょう。

49の3.2 指定官庁による優先権の回復


(a) 国際出願が先の出願に基づく優先権の主張を伴い、国際出願日が当該優先期間の満了の日の後であるが、当該満了の日から二箇月の期間内である場合には、指定官庁は、(b)の規定に基づく出願人の請求によつて、当該指定官庁が適用する基準(「回復のための基準」)が満たされていること、すなわち、優先期間内に国際出願が提出されなかつたことが、次のいずれかの場合によると認めたときには、優先権を回復する。
(ⅰ) 状況により必要とされる相当な注意を払つたにもかかわらず生じた場合
(ⅱ) 故意ではない場合
各指定官庁は、これらの基準のうち少なくとも一つを採用し、また基準の両方を採用することができる。


(b) (a)の規定に基づく請求は、次のとおりとする。
(ⅰ) 第二十二条に規定する期間から一箇月の期間内に又は、出願人が第二十三条(2)の規定に基づき指定官庁に明示の請求を行つた場合には、指定官庁が当該請求を受領した日から一箇月の期間内に、当該指定官庁に提出する。
(ⅱ) 当該優先期間内に国際出願を提出されなかつたことの理由を記載するとともに、(c)の規定に基づき要求される申立てその他の証拠を公表することが望ましい。
(ⅲ) (d)の規定に基づき要求される回復請求のための手数料を添える。


(c) 指定官庁は、事情に応じて相当の期間内に(b)(ⅱ)に規定する理由の記述を裏付ける申立てその他の証拠を要求することができる。


(d) (a)の規定に基づく請求の提出は、回復請求手数料の指定官庁への支払を条件とすることができる。


(e) 指定官庁は、(a)の規定に基づく請求の全部又は一部に関し、拒否しようとすることについて事情に応じて相当の期間内に意見を述べる機会を出願人に与えることなく、これを拒否しない。指定官庁による拒否しようとする書面は、(c)の規定に基づく申立てその他の証拠を提出する求めとともに出願人に送付できる。


(f) 指定官庁が適用する国内法令が、優先権の回復に関して、出願人の立場からみて、(a)及び(b)の規定に基づく要件よりも有利な要件を規定す規定する場合には、当該指定官庁は、優先権を決定する場合に、当該(a)及び(b)の規定に基づく要件に代わり、国内法令の規定に基づく要件を適用することができる。


(g) 各指定官庁は、当該指定官庁が適用する回復のための基準、要件、該当する場合には(f)の規定に従つて適用される国内法令、及びこれに関する後の変更を国際事務局に通知するものとする。国際事務局は、当該情報を速やかに公報に掲載する。


(h) 二千五年十月五日において(a)から(g)までの規定が指定官庁によつて適用される国内法令に適合しない場合には、当該指定官庁がその旨を二千六年四月五日までに国際事務局に通告することを条件として、これらの規定は、当該国内法令に適合しない間、当該指定官庁については、適用しない。国際事務局は、その通告を速やかに公報に掲載する。

--------------- 引用ここまで ------------

これは26の2.3 受理官庁による優先権の回復に似ています。

優先期間内に国際出願が提出されなかつたことが、次のいずれかの場合によると認めたときには、優先権を回復する。
(ⅰ) 状況により必要とされる相当な注意を払つたにもかかわらず生じた場合
(ⅱ) 故意ではない場合
各指定官庁は、これらの基準のうち少なくとも一つを採用し、また基準の両方を採用することができる。

(受理官庁の基準では回復を認めなかったとしても)49の3.2では指定官庁が採用している基準で優先権の回復を認める手順だからです。

 

 

PCT規則 受理官庁による優先権の回復の効果 49の3.1

こんにちは

前回、優先権の回復の説明の途中でしたので続きを説明します。

 

第四十九規則の三 受理官庁による優先権の回復の効果、指定官庁による優先権の回復
49の3.1 受理官庁による優先権の回復の効果
49の3.2 指定官庁による優先権の回復 

 

まず初めに場合分けをして49の3.1 の優先権の回復の効果についての条文がどのケースの話をしているのかを意識して読むといいでしょう。

 

場合分け

受理官庁が優先権の回復を認める ー>指定官庁も優先権の回復を認める

受理官庁が優先権の回復を認める ー>指定官庁は優先権の回復を認めない

受理官庁が優先権の回復を認めない ー>指定官庁が優先権の回復を認める このケースは49の3.2 

 

お手持ちの条文集もしく以下のリンクをご参照ください。

PCTリーガルテキスト:条約、規則及び実施細則

49の3.1 受理官庁による優先権の回復の効果


(a) 受理官庁が当該優先期間内に国際出願が提出されなかつたことが状況により必要とされる相当な注意を払つたにもかからわず生じたとの認定に基づき、26の2.3の規定に基づき優先権を回復した場合には、当該回復は、(c)の規定に従うことを条件として、各指定国において効力を有する。


(b) 受理官庁が当該優先期間内に国際出願が提出されなかつたことが故意ではないと認定し、26の2.3の規定に基づき優先権を回復した場合には、当該回復は、(c)の規定に従うことを条件として、国内法令が当該基準、又は出願人からみて当該基準より有利な基準に基づく優先権の回復を規定する指定国において効力を有する


(c) 26の2.3の規定に基づく受理官庁による優先権の回復の決定は、指定官庁、裁判所若しくはその他の権限のある機関又は当該指定国のために行動する機関が、26の2.3(a)の規定に基づき受理官庁に提出された請求に記載された理由及び26の2.3(b)(ⅲ)の規定に基づき受理官庁に提出された申立てその他の証拠を考慮に入れて、26の2.3(a)、(b)(ⅰ)又は(c)の規定に基づく要件が満たされていないと認めた指定国においては効力を有しない。 

 

(d) 指定官庁は、(c)に規定する要件が満たされていることについて合理的な疑義がない限り、受理官庁の決定を検査してはならず、この場合には、指定官庁は出願人にその旨を通知し、当該疑義の理由を示し、また、出願人に相当な期間内に意見を述べる機会を与える。


(e) 指定国は、優先権の回復のための26の2.3の規定に基づく請求を拒否する受理官庁の決定に拘束されることはない。


(f) 受理官庁が優先権の回復のための請求を拒否する場合には、指定官庁は、当該請求を49の3.2(a)の規定に基づき当該規則に規定する期間内に指定官庁に提出された回復の請求とみなすことができる。


(g) 二千五年十月五日において(a)から(d)までの規定が指定官庁によつて適用される国内法令に適合しない場合には、当該指定官庁がその旨を二千六年四月五日までに国際事務局に通告することを条件として、これら規定は、その国内法令に適合しない間、当該指定官庁については、適用しない。国際事務局は、その通告を速やかに公報に掲載する。

--------------- 引用ここまで ------------

優先権の回復の条件は各国で異なる条件、具体的には相当な注意を払ったにもかからわず生じた場合、故意でない場合がありえます。優先権の回復については受理官庁と指定官庁で異なる判断となるケースがありえるわけです。49の3.1 は受理官庁での優先権が回復したときの話です。

PCT規則 受理官庁による優先権の回復 26の2.3

こんにちは

今回は受理官庁による優先権の回復の条文を見てみます。

回復とは期限を過ぎても一定の条件を満たすときには請求を認める制度ですが、条件があります。

特に学習上押さえておくべき点として回復が認められる優先期間の満了からの期間(期限と、押さえておくとキーワードとしては、相当な注意を払った場合と 故意ではない場合の2つのキーワードがあります。

これはPLT条約で使われている用語で受理官庁の国によりどちらを採用しているか(もしくは両方か)は異なります。PLT条約の内容については今は触れませんのでリンクだけ紹介しておきます。そのうち扱いたいと思います。

特許法条約(PLT)の概要 | 経済産業省 特許庁

 

いきなり条文を見てもわかりにくいと思いますので、まずは以下の特許庁のリンクをご一読いただければいいかと思います。

令和5年4月1日以降に優先期間を徒過した国際出願の優先権の回復(「故意ではない」基準)について | 経済産業省 特許庁

 

それでは条文を見てみましょう。条文の並びとしては、(a)から(j)までありその中に数字で(i)などがあります。

 

PCT規則

26の2.3 受理官庁による優先権の回復


(a) 国際出願の国際出願日が、当該優先期間の満了の日の後であるが、当該満了の日から二箇月の期間内である場合には、受理官庁は、出願人の請求により、かつ、(b)から(g)までの規定に従うことを条件として、当該受理官庁が採用する基準(「回復のための基準」)が満たされていること、すなわち、当該優先期間内に国際出願が提出されなかつたことが、次のいずれかの場合によると認めた場合には、優先権を回復する。
(ⅰ) 状況により必要とされる相当な注意を払つたにもかかわらず生じた場合
(ⅱ) 故意ではない場合
各受理官庁は、これらの基準のうち少なくとも一を適用するものとし、また、これらの両方を適用することができる。


(b) (a)の規定に基づく請求は、次のとおりとする。
(ⅰ) (e)に規定する期間内に当該受理官庁に提出すること。
(ⅱ) 当該優先期間内に国際出願を提出されなかつたことの理由を記載すること。
(ⅲ) 望ましくは(f)の規定に基づき要求される申立てその他の証拠が添付されているものとすること。

(c) 先の国際出願についての優先権の主張が当該国際出願に記載されていない場合には、当該出願人は、(e)に規定する期間内に、26の2.1(a)の規定に基づく優先権の主張を追加する書面を提出する。

(d) (a)に規定する請求の提出は、(e)に規定する期間内に回復請求手数料の受理官庁への支払を条件とすることができる。当該手数料の額は、受理官庁が定める。当該手数料の支払期間は、受理官庁の選択により、(e)に規定する当該期間の満了の後最長二箇月の期間延長することができる。

(e) (b)(ⅰ)、(c)及び(d)に規定する期間は優先期間の満了の日から二箇月とする。ただし、出願人が、第二十一条(2)(b)の規定に基づき早期の国際公開を請求する場合において、国際公開の技術的な準備が完了した後に(a)の規定に基づく請求若しくは(c)に規定する書面で提出されたもの又は(d)に規定する手数料で支払われたものは、当該期間内に提出されなかった又は支払われなかつたものとみなす。

(f) 受理官庁は、事情に応じて相当の期間内に(b)(ⅱ)に規定する理由の陳述を裏付ける申立てその他の証拠を提出することを要求することができる。

(g) 受理官庁は、(a)の規定に基づく請求の全部又は一部に関し、拒否しようとすることについて事情に応じて相当の期間内に意見を述べる機会を出願人に与えることなく、これを拒否しない。受理官庁による拒否しようとする書面は、(f)の規定に基づく申立てその他の証拠を提出する求めとともに出願人に送付できる。


(h) 受理官庁は、速やかに次のことを行う。

(ⅰ) 国際事務局に(a)の規定に基づく請求の受理を通知すること。

 (ⅱ) 当該請求に基づく決定すること。
 (ⅲ) 出願人及び国際事務局に当該決定及び当該決定が基づいた回復のための基準を通知すること。
(ⅳ) (hの2)の規定に従うことを条件として、出願人から受領した(a)の規定に基づく請求に関する全ての書類(請求自体の写し、(b)(ⅱ)に規定する理由の陳述及び(f)に規定する申立てその他の証拠を含む。)を国際事務局に送付すること。
(hの2) 受理官庁は、次のことを認めるときは、出願人による理由を示した請求により、又は受理官庁の決定に基づき、(a)の規定に基づく請求に関して受領した書類又はその一部を送付してはならない。
(ⅰ) 当該書類又はその一部が国際出願について公衆に周知する目的に明らかに資さないこと。
 (ⅱ) 当該書類又はその一部の公開又は公衆による利用により、いずれかの者の個人的な又は経済的な利益が明らかに損なわれること。

(ⅲ) 当該書類又はその一部を利用する優先的な公共の利益がないこと。
受理官庁は、書類又はその一部を国際事務局に送付しないことを決定する場合には、国際事務局にその旨を通知する。

 

注意 以下の(i)は数字の1ではなく英語のアイ
(i) 各受理官庁は、国際事務局に当該受理官庁が採用する回復のための基準及びこれに関する後の変更を通知するものとする。国際事務局は、当該情報を速やかに公報に掲載する。

(j) 二千五年十月五日において(a)から(i)までの規定が受理官庁によつて適用される国内法令に適合しない場合には、当該受理官庁がその旨を二千六年四月五日までに国際事務局に通告することを条件として、これらの規定は、その国内法令に適合しない間、当該受理官庁については、適用しない。国際事務局は、その通告を速やかに公報に掲載する。

--------------- 引用ここまで ------------

長くなりましたので

第四十九規則の三 受理官庁による優先権の回復の効果、指定官庁による優先権の回復については次回にします。

 

 

PCT規則 優先権の主張の補充又は追加 26の2.1 優先権の主張の補充又は追加

こんにちは

 

優先権主張に関してPCT規則を見てましょう。

条文集をお持ちの方は第二十六規則の二 優先権の主張の補充又は追加をご覧ください。

(ご参考までに学習には紙の条文集に重要と思われるところをマークしておくといいかと思います。特に条約や規則はよく出題される個所とそうでない箇所が分かれます。)

PCTリーガルテキスト:条約、規則及び実施細則

第二十六規則の二 優先権の主張の補充又は追加
26の2.1 優先権の主張の補充又は追加
(a) 出願人は、優先日から十六箇月の期間又は、優先権の主張の補充若しくは優先権の主張の願書への追加により優先日について変更が生じる場合には、変更された優先日から十六箇月の期間のうちいずれか早く満了する期間内に、受理官庁又は国際事務局に提出する書面によつて、優先権の主張の補充又は追加をすることができる。

ただし、当該書面が国際出願日から四箇月を経過する時までに提出することができる場合に限る。優先権の主張の補充には、4.10に規定する表示の追加を含めることができる。


(b) 出願人が第二十一条(2)(b)の規定に基づいて早期の国際公開を請求した後に受理官庁又は国際事務局が受理した(a)に規定する書面は、当該請求が国際公開の技術的準備の完了前に取り下げられない限り、提出されなかつたものとみなす。


(c) 優先権の主張の補充又は追加により優先日に変更が生じる場合には、先に適用された優先日から起算した場合にまだ満了していない期間は、変更された優先日から起算する。

--------------- 引用ここまで ------------

出願時に優先権主張をしていなかった、もしくは追加で別の出願についても優先権主張の基礎としたい場合などの規則です。

優先権の主張の補充又は追加をすることができるのは優先日(変更されたときは、変更された優先日)から16か月ですが、国際出願日がすでに確定している場合はそれから4月となります。

優先日(先の出願日)から優先期間の終わる直前(1年弱)に優先権主張を伴う出願(後の出願)をすることが多いかと思いますが、優先期間ぎりぎりまで待たずに早期に後の出願をすることもあると思いますので、国際出願日から4月には気を付けてください。

(b)にあるように国際公開の請求を自発的にすると、優先権の主張の補充又は追加に対しては制限がかかりますのでご注意ください。

PCT規則 優先権の主張の欠陥 26規則の2.2

こんにちは

PCTでの優先権についての続きです。

これまで説明したとおり、PCT条約には優先権の主張についてあまり具体的な手続きは書かれておらず、PCT規則にゆだねられています。

 

本題の前に、ややこしいのですが、PCT規則の条文番号の数え方として、「の」の入る位置が大事で

26.22 第十四条(1)(a)(ⅰ)及び(ⅱ)に規定する要件の点検

262.2 優先権の主張の欠陥

は別ものです。

 

では26の2.2条文を見ていきましょう。

PCT規則「26の2.1 優先権の主張の補充又は追加」では出願人からの自発的な優先権の主張の補充又は追加ですが、この26の2.2 では受理官庁または国際事務局からの不備の指摘のケースとなりまいす。

読むときには、主語に注意してください。受理官庁なのか、国際事務局なのかに気にしましょう。

 

PCT26規則の2.2 優先権の主張の欠陥


(a) 受理官庁又は、受理官庁が怠つたときは、国際事務局は、優先権主張に関して次のいずれかのことを認める場合には、出願人に対し優先権の主張の補充をするよう求める。
(ⅰ) 当該国際出願の国際出願日が、当該優先期間の満了の日の後であり、かつ、26の2.3の規定に基づく優先権の回復の請求が提出されていないこと。
(ⅱ) 当該優先権の主張が4.10に定める要件を満たしていないこと。
(ⅲ) 当該優先権の主張における表示がこれに対応する優先権書類に記載されている表示と合致しないこと。 

(ⅰ)に規定する場合において、国際出願日が当該優先期間の満了の日から二箇月以内であるときは、当該受理官庁又は国際事務局は、26の2.3の規定に従つて優先権の回復のための請求の提出の可能性を出願人に通知する。ただし、受理官庁が国際事務局に対して、26の2.3(a)から(i)までの規程が当該受理官庁によつて適用される国内法令と適合しないことを、26の2.3(j)の規定に基づき通知した場合は、この限りでない。


(b) 出願人が、26の2.1(a)に規定する期間の満了前に、優先権の主張の補充をする書面を提出しない場合には、当該優先権の主張は、(c)の規定に従うことを条件として、条約の手続上行われなかつたものとみなし(「無効とみなす」)、受理官庁又は国際事務局は、その旨を宣言し、及び出願人に通知する。受理官庁又は国際事務局がその旨を宣言する前であり、かつ、当該期間の満了の後一箇月以内に受理した優先権の主張の補充をするいかなる書面も、当該期間の満了の前に受理したものとする。


(c) 優先権の主張は、次のいずれかの理由のみでは無効とはみなさない。
(ⅰ) 4.10(a)(ⅱ)に規定する先の出願の番号の表示が欠落していること。
(ⅱ) 優先権の主張における表示がこれに対応する優先権書類に記載されている表示と合致しないこと。
(ⅲ) 当該国際出願の国際出願日が、当該優先期間が満了した日よりも遅い日であること。ただし、国際出願日は当該満了の日から二箇月の期間内とする。


(d) 受理官庁若しくは国際事務局が(b)の規定に基づく宣言を行つた場合、又は(c)が適用されるという理由のみで優先権の主張が無効とみなされなかつた場合には、国際事務局は、実施細則に定めるところにより、優先権の主張に関する情報及び国際公開の技術的な準備が完了する前に国際事務局が受理した出願人の提出した当該優先権の主張に関する情報を国際出願とともに公表する。

国際出願の国際公開が第六十四条(3)の規定により行われない場合には、当該情報は、第二十条の送達に含める。


(e) 出願人は、優先権の主張の補充又は追加を希望するが26の2.1に規定する期間が満了している場合には、優先日から三十箇月を経過する前に、実施細則でその額を定める特別の手数料の支払を条件として、当該事項に関する情報を公表することを請求することができ、国際事務局は、速やかにその情報を公表する。

引用元 PCTリーガルテキスト:条約、規則及び実施細則

 

優先権の回復期間内であれば、仮に優先権主張に不備があったとしても、優先権の回復のための請求の提出の可能性を出願人に通知することになっています。

実は次の章の「26の2.3 受理官庁による優先権の回復」に回復の話が出てくるのでまだ説明していませんが、とりあえず優先期間が満了しても、回復の仕組みがあると理解していただければと思います。

出願人が適切な対応をしなかったとしても、優先権の主張は無効になりますが、出願自体が無効になるわけではありません。(優先日が後になると先行文献が変わるので拒絶、無効になるかもしれませんが)

PCT規則 優先権書類  PCT規則17.1 先の国内出願又は国際出願の謄本を提出する義務

こんにちは

 

今回はPCT規則17 優先権書類を見てみます。

PCTの学習の難しいところは、PCT条約は原則は書いてあるものの具体的な手続きはPCT規則にゆだねられています。PCTは統一した手続が大事な点ですから、条約だけでなくPCT規則を多少は見ないと具体的な手続きの理解できません。

 

PCT規則17 なお、PCT規則は膨大ですべてを引用できませんので、以下のリンクを参照ください。

PCTリーガルテキスト:条約、規則及び実施細則

PCT規則17 優先権書類
17.1 先の国内出願又は国際出願の謄本を提出する義務


(a) 第八条の規定により先の国内出願又は国際出願に基づく優先権の主張を伴う場合には、当該先の国内出願又は国際出願を受理した当局が認証したその出願の謄本(「優先権書類」)は、既に優先権書類が優先権を主張する国際出願とともに受理官庁に提出されている場合並びに(b)及び(bの2)の規定に従う場合を除くほか、優先日から十六箇月以内に出願人が国際事務局又は受理官庁に提出する。ただし、当該期間の満了後に国際事務局が受理した当該先の出願の写しは、その写しが国際出願の国際公開の日前に到達した場合には、当該期間の末日に国際事務局が受理したものとみなす。


(b) 優先権書類が受理官庁により発行される場合には、出願人は、優先権書類の提出に代えて、受理官庁に対し、優先権書類を、作成し及び国際事務局に送付するよう請求することができる。その請求は、優先日から十六箇月以内にするものとし、また、受理官庁は、手数料の支払を条件とすることができる。
(bの2) 国際事務局が優先権書類を実施細則に定めるところにより国際出願の国際公開の日前に電子図書館から入手可能である場合には、出願人は、優先権書類の提出に代えて、国際事務局に対し、国際公開の日前に、当該優先権書類を当該電子図書館から入手するよう請求することができる。


(c) (a)、(b)及び(bの2)の要件のいずれも満たされない場合には、指定官庁は、(d)の規定に従うことを条件として、優先権の主張を無視することができる。ただし、指定官庁は、事情に応じて相当の期間内に出願人に優先権書類を提出する機会を与えた後でなければ、優先権の主張を無視することはできない。


(d) 指定官庁は、(a)に規定する先の出願が国内官庁としての当該指定官庁に出願されている場合又は当該指定官庁が実施細則に定めるところにより優先権書類を電子図書館から入手可能な場合は、(c)の規定により優先権の主張を無視することはできない。 

-----------------引用ここまで----------------------------

PCTでは、受理官庁、国際事務局、指定官庁の3つのどれが登場してくるのか主語をチェックする必要があります。例えば同じ日本の特許庁でも段階により、それぞれの異なる役割があります。さらにややこしいのは国際事務局も直接出願を受け付けることができる点です。

 

先の国内出願又は国際出願の謄本(つまり優先権証明に相当)を提出するのは受理官庁または国際事務局となっています。期間は優先日から16月(1年4月)です。

ちなみに、私がよくやってしまったうっかりミスとして1年4月と14月を間違えるのがあります。優先権証明書の話なのか、優先権の回復期間の話をしているのか混乱しやすいのでご注意ください。

 

PCT規則17・1(bの2) の改正の経緯については以下に解説があります。条文に出てくる時期についても優先日から十六箇月以内と国際公開の日前の2つがありますのでご注意ください。

平成24年7月に発効した特許協力条約規則(PCT規則)等の改正の概要 | 経済産業省 特許庁

PCT条約と優先権 PCT条約8条

こんにちは

 

今回はPCT条約の8条優先権を見てみます。

PCTは条約以外にも具体的な手続きについては、PCT規則がたくさんあるのですが、まずは8条を見てみましょう。

 

第八条 優先権の主張

(1) 国際出願は、規則の定めるところにより、工業所有権の保護に関するパリ条約の締約国において又は同条約の締約国についてされた先の出願に基づく優先権を主張する申立てを伴うことができる。

(2)(a) (b)の規定が適用される場合を除くほか、(1)の規定に基づいて申し立てられた優先権の主張の条件及び効果は、工業所有権の保護に関するパリ条約のストックホルム改正条約第四条の定めるところによる。

(b) いずれかの締約国において又はいずれかの締約国についてされた先の出願に基づく優先権の主張を伴う国際出願には、当該締約国の指定を含めることができる。国際出願が、いずれかの指定国において若しくはいずれかの指定国についてされた国内出願に基づく優先権の主張を伴う場合又は一の国のみの指定を含む国際出願に基づく優先権の主張を伴う場合には、当該指定国における優先権の主張の条件及び効果は、当該指定国の国内法令の定めるところによる。

PCTリーガルテキスト:条約、規則及び実施細則

 

(a)にあるようにPCTでの優先権はパリ条約4条に基づく優先権主張の条件および効果となります。

ただし(b)は例外の場合で、条文を構造を分解してみますと

国際出願が、

    • いずれかの指定国において
      • 若しくは
    • いずれかの指定国についてされた
  • 国内出願に基づく優先権の主張を伴う場合
    • 又は
  • 一の国のみの指定を含む国際出願に基づく優先権の主張を伴う場合には

例えば日本を例にすると、日本での国内出願に基づいてPCTで日本を自己指定して後の出願した場合は、その優先権の主張の条件及び効果は日本の国内法令による(具体的には国内優先権)となります。