Studying Intellectual Property Law

知的財産法条文教室 みなさまの知財学習のお手伝い

新規性喪失の例外 証明書を提出するタイミング 優先権や分割の場合

こんにちは

 

新規性喪失の例外を適用する出願は、

  • 公知になってから1年以内に出願し、
  • その出願と同時に新規性喪失の例外を受ける旨を示し、
  • さらに証明書は出願から30日以内となります。(30条3項)

また証明書についてはその責めに帰することができない理由による追完もあります。(30条4項)故意でなかったという理由では認められない点にもご注意ください。

 

その責めに帰することができない理由について青本には以下の説明があります。

〈その責めに帰することができない理由〉

天災地変のような客観的な理由に基づいて手続をすることができない場合が含まれるのは言うまでもないこととして、通常の注意力を有する当事者が通常期待される注意を尽くしても、なお請求期間を徒過せざるを得なかったような場合は、主観的な理由による場合であってもその責めに帰することができない場合に含まれよう。

--------------- 青本 引用ここまで ------------

 

発明の新規性の喪失の例外
第三十条

1項 (略)
2項 (略)
3前項の規定の適用を受けようとする者は、その旨を記載した書面を特許出願と同時に特許庁長官に提出し、かつ、第二十九条第一項各号のいずれかに該当するに至つた発明が前項の規定の適用を受けることができる発明であることを証明する書面(次項において「証明書」という。)を特許出願の日から三十日以内に特許庁長官に提出しなければならない。
4証明書を提出する者がその責めに帰することができない理由により前項に規定する期間内に証明書を提出することができないときは、同項の規定にかかわらず、その理由がなくなつた日から十四日(在外者にあつては、二月)以内でその期間の経過後六月以内にその証明書を特許庁長官に提出することができる。

--------------- 特許法 第三十条 引用ここまで ------------

 

ここまでは割とわかりやすいのですが、混乱するのは優先権や分割などで前後の2つの出願があるケースです。

 

優先権のときは

新規性喪失の例外のQ&Aに説明がありました。

いくつかご紹介しますが、すべては紹介できないので元のPDFをご参照ください。

https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/patent/document/hatumei_reigai/h30_qanda.pdf

Q5-1:国内優先権主張を伴う出願をする場合に、先の出願が第 2 項の規定の適用を受けているとき、この国内優先権主張を伴う出願は、新規性を喪失した時点から 1 年以内でなくとも、先の出願から 1 年以内に特許出願すれば発明の新規性喪失の例外規定の適用を受けることができるのでしょうか? 

A:受けることができます(特許法第 41 条第 2 項)。
なお、第 3 項に規定された第 2 項の規定の適用を受けようとする旨を記載した書面については、先の出願時に提出していても、国内優先権主張を伴う後の出願を行う際に、あらためて提出する必要があります。

一方、同項に規定された「証明する書面」については、先の出願において提出されていて内容に変更がないものについては、後の出願時にその旨を願書に表示して、提出を省略することができます。 

Q5-2:略

Q5-3:国内優先権の主張を伴う後の出願をする場合において、先の出願時に第 2 項の規定の適用を受けるための手続をしていないにもかかわらず、後の出願時にその手続をしたときはどのように扱われるのでしょうか? 

A:新規性を喪失した日から 1 年以内に後の出願をする場合は、後の出願時に第 2 項の規定の適用を受けるための手続を行えば発明の新規性喪失の例外規定の適用を受けることができます。これに対し、新規性を喪失した日から 1 年経過後に後の出願をする場合は、新規性喪失の例外の適用を受けることはできません。

Q5-4:発明を刊行物に発表した後、1 年以内に米国において特許出願を行い、発表から 1 年経過後にその米国特許出願を基礎としたパリ条約による優先権主張を伴って日本へ特許出願を行った場合、「1 年以内にその者がした特許出願」と認められますか?
A:認められません。
発表後 1 年以内に日本へ出願されない限り発明の新規性喪失の例外規定の適用を受けることはできません。

Q5-5および5-6:略

Q5-7:優先権主張を伴う特許協力条約(PCT)に基づく国際出願をする場合における、第 2 項の規定の適用を受けるための手続について教えてください。 

A:原則として発明の公開日から 1 年以内に国際出願を行い(※1)、国内処理基準時(※2)の属する日後 30 日以内に、発明の新規性喪失の例外規定の適用を受けようとする旨を記載した書面(国際段階において、「不利にならない開示又は新規性喪失の例外に関する申立て」(PCT規則 4.17(v)、26 の 3.1)が指定国としての日本国を対象としてなされている場合には省略できます)及び「証明する書面」を提出する必要があります

--------------- 特許庁 新規性喪失の例外 Q&A 引用ここまで ------------

 

分割出願のときは

もとの出願で出しておけば、自動的に分割後の出願では提出しなくても提出した扱いんあります。国内優先権では証明書は不要でも、その旨は後の出願で再度示す必要がありましたね。分割ではその旨も不要です。

また、もとの出願で出していなくても、後の分割出願で出すことができます。(特許法44条2項の分割出願の日付の遡及しない場合)もちろん公知になってから1年以内でないといけませんが。

 

特許審査基準には以下の説明があります。

https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/patent/tukujitu_kijun/kaitei2/document/h3006_kaitei/sinkisei_sousitu_reigai.pdf

「(要件1) 発明が公開された日から1年以内に特許出願をしたこと」を満たしているか否かの判断に当たっては、各種出願の「特許出願をした」日は、以下のように取り扱われる。

(途中略)

4.3.4 分割出願、変更出願及び実用新案登録に基づく特許出願分割出願、変更出願及び実用新案登録に基づく特許出願の場合は、原出願の出願日である。
ただし、原出願において「証明する書面」が提出されていない場合は、現実の出願日である。

--------------- 特許審査基準 引用ここまで ------------

補足 つまり前の出願では新規性例外の喪失の証明書を未提出で、後の出願で初めて新規性例外の喪失の証明書を出すなら、後の出願をした日(現実の出願日)が特許出願をした日となります。

 

分割については以前扱ったので以下をご参照ください。

 

参考 法改正 意匠における新規性喪失の例外の証明書について

意匠においては最近、証明書の記載が大幅に変わりました。

改正法の施行日(令和6年1月1日)以後の出願については、意匠登録を受ける権利を有する者(権利の承継人も含む)の行為に起因して公開された意匠について、最先の公開の日のいずれかの公開行為について証明することで、その日以後に公開した同一又は類似の意匠についても新規性喪失の例外規定の適用が受けられるようになります

意匠の新規性喪失の例外規定の適用を受けるための手続について(出願前にデザインを公開した場合の手続について) | 経済産業省 特許庁

でもこれは意匠についての話で特許については新規性喪失の例外の証明書の記載は以前のままなのでご注意ください。